2026年1月、長年使われてきた「下請法」が「取適法」へと生まれ変わりました。
「名前が変わっただけでしょ?」
そう思っていた実務担当者の方も多いかもしれません。
しかし、3条書面が4条書面へと変わったこの改正、実は現場の運用に直結する変更点がいくつも含まれています。
今まで通りの発注書を使い続けていると、気づかないうちに違反状態になっているケースも出てきています。
この記事では、2026年8月の行政書士事務所開業に向けて準備を進める中で、取適法について学んだことを、実務担当者の方に向けてわかりやすく整理しました。
4条書面の記載事項から電子交付のルール、違反した場合のペナルティまで、この記事を読み終えるころには「うちは何をすべきか」がクリアになるはずです。
取適法の「3条書面」とは?4条書面に変わった理由をわかりやすく解説
下請法から取適法へ──2026年1月に何が変わったのか
2026年1月1日、以前の下請法は「取適法」へと名称が変更されました。
「取適法」の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。
とても長いですね。一言一句違わず覚えるのは大変ですので、こちらを覚えてください。 略称「中小受託取引適正化法」。通称「取適法」です。
「下請法から取適法へ」――公正取引委員会はこんなキャッチフレーズを使っています。
「そうか、名前が変わったんだな」そう理解したと思います。
ですが、それだけではなく、法律の中身も改正されている部分があります。
「3条書面」が「4条書面(4条明示)」に変わった理由
下請法時代に3条書面と呼ばれていた書面を覚えていますか?取適法では「4条書面(4条明示)」と呼ばれています。
4条書面とは受託事業者に渡す書面のことです。
「3条?4条?どういうこと?!」と驚くかもしれません。
でも、びっくりしなくて大丈夫です。
法律の条文がずれて、3条から4条になることにより、そう呼ばれることになっただけなんです。
しかし、全く同じ内容で条文がずれただけかというとそうではありません。 内容も少し変わっています。
名称だけの変更ではない──実務担当者が注意すべきポイント
では、具体的に何が変わったのでしょうか。ここがポイントです。 以下の3つのポイントが変更点に挙げられます。
- 電磁的交付の条件が大幅に緩和された
- 受託事業者から「紙での交付」を請求できる権利が新設された
- 記載事項が整理・追加された(12項目に)
次の章から詳しく見ていきましょう。
取適法 4条書面の必須記載事項12項目一覧
12項目一覧と各項目の意味
4条書面とは、受託事業者に渡す書面と先に述べました。 では一体何を記載して受託事業者に渡すのでしょうか。 取適法ガイドラインでは、12項目の必須記載事項が定められています。
まとめると、以下の表のとおりです。
| No. | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 当事者の名称 | 委託事業者および中小受託事業者の名称(番号・記号等による明示も可) |
| 2 | 委託をした日 | 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・特定運送委託をした日 |
| 3 | 給付の内容 | 中小受託事業者が提供する給付または役務の内容 |
| 4 | 受領期日 | 給付を受領する期日、または役務の提供を受ける期日・期間 |
| 5 | 受領場所 | 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所 |
| 6 | 検査完了期日 | 給付内容の検査をおこなう場合、その検査を完了する期日 |
| 7 | 代金の額 | 支払う代金の金額 |
| 8 | 代金の支払期日 | 代金を支払う期日 |
| 9 | 一括決済方式の詳細 | 一括決済方式で支払う場合、金融機関名・支払額・期間の始期・決済日 |
| 10 | 電子記録債権の詳細 | 電子記録債権で支払う場合、債権額・期間の始期・満期日 |
| 11 | 有償支給原材料の詳細 | 原材料等を有償支給する場合、品名・数量・対価・引渡期日・決済方法 |
| 12 | 未定事項 | 記載できない事項がある場合、その理由と内容確定予定日 |
※ No.9〜11は該当する取引がある場合のみ記載が必要です。すべての取引で12項目すべてが必須となるわけではありません。
「12項目もあるなんて、随分たくさんだなぁ」という印象を受けると思います。
私も勉強していて、項目がたくさんで覚えきれないなと感じました。
一つずつ確認すると、確かにどれも大切な項目なので、書面に記載しなければならないのはわかります。
抜けや漏れがないように注意して書面を作成しましょう。
記載が「後回し」にできる例外ケースと補充書面の扱い
4条書面は基本的に直ちに書面を作成しなければなりません。しかし、4条書面の記載が「後回し」にできる例外のケースもあります。
法律上では「正当な理由がある場合」と定められています。
「正当な理由」と言われても、ピンとこないですよね。例えば、具体例として以下のような事例が考えられます。
- ソフトウェアの作成委託で、発注時点でユーザーの仕様が確定しておらず、給付内容・代金・受領期日・受領場所が定まっていない場合
- 広告制作物の作成委託で、発注時点で制作物の具体的内容が決定できず、給付内容・代金・受領期日が定まっていない場合
- 修理委託で、発注時点では故障箇所とその程度が不明なため、給付内容・代金・受領期日が定まっていない場合
ただし、いずれの場合も、内容が確定した時点で直ちに補充書面を交付する義務があります。
7条記録(旧5条書類)との違い──どちらに何を書く?
4条書面と間違えやすいものに、7条記録というものもあります。旧5条書類のことです。
3条4条、5条7条と条文番号で言われても混乱するばかりだなぁと私も感じますね…。
7条記録とは公正取引委員会の調査に備えた自社保存用の記録です。受託事業者には渡しません。
4条書面と7条記録には違いがありますので、一覧表にしておきます。
| 4条書面(4条明示) | 7条記録(旧5条書類) | |
|---|---|---|
| 作成者 | 委託事業者 | 委託事業者 |
| 保存義務 | なし | 2年間 |
| 記載事項 | 12項目 | 17項目 |
| 作成時期 | 委託後直ちに | 委託後速やかに |
取適法 4条書面の電子交付ルール|メールやSNSは使える?
取適法改正で「事前承諾不要」に──何が変わったのか
取適法では、4条書面の電子交付ルールが大きく変わりました。 ポイントは2つです。
- 受託事業者の事前承諾が不要になった
- ファイルの記録・出力も不要になった
電子メール・電子契約サービスで交付するときの注意点
電子交付は、電子メール、SMS、SNSのDM、電子契約サービス等が利用可能になっています。
この場合の条件は、「受託事業者が記録・出力できる方法」であることです。
気をつけたいことは、口頭やFAXは認められないということです。
使い慣れたツールでも、受託事業者側が記録・出力できる環境かどうか、事前に確認しておくと安心ですね。
「書面交付の請求」への対応義務──受託事業者から求められたら?
4条書面には、受託事業者が「書面交付の請求」をできる仕組みが新設されました。
受託事業者が「紙で欲しい」と請求してきた場合、委託事業者は書面で交付する義務があります。
電子交付を原則としている会社でも、個別対応が必要になるケースが出てきます。
電子化で効率が上がる一方、対応漏れが違反につながるリスクも生まれています。次の章で確認しておきましょう。
取適法 4条書面の違反ペナルティと実務でありがちなミス3つ
4条書面を交付しなかった・不備があった場合の罰則
4条書面を交付しなかった場合、50万円以下の罰金が課される可能性があります(取適法14条)。
違反して即罰金というわけではなく、公正取引委員会による調査・勧告・命令を経て課されます。
焦ってパニックになる必要はありませんが、誠実に対応する必要がありますね。
4条書面を交付したとしても、不備のある書面を交付した場合、同様に罰則の対象になりえます。
【注意】罰則の主体は、委託事業者(発注側)です。
実務でありがちな記載漏れ・ミス事例3つ
実務でよく見られる記載漏れ・ミス事例を3つ紹介します。
- 代金の額が未定のまま、補充書面の交付を失念していた
- 検査完了期日の記載を省略していた(検査が不要と思い込んでいた)
- 電子交付したが、受託事業者が記録・出力できない形式(閲覧専用PDFなど)だった
フリーランス保護法等と重なる場合はどうする?
取適法だけでなく、取引の内容によってはフリーランス保護法等の書面義務も同時に適用される場合があります。
取適法と重なる取引ではどの法律の書面要件を満たすかの判断が必要になってきます。
「取適法の4条書面だけ出せばOK」と言えてしまえばいいのですが、そうでもありません。
取適法もフリーランス保護法も新しい法律なので、実務の現場でも混乱していると思います。
複数の法律が絡む場合は専門家への確認をおすすめします。
まとめ:取適法 4条書面の対応チェックリスト
今すぐ確認すべきチェックリスト(3項目)
この記事で解説した内容を、以下の3点で確認しておきましょう。
- 自社の発注書・注文書が4条書面の12項目を満たしているか
- 電子交付の方法が「受託事業者が記録・出力できる方法」になっているか
- 受託事業者から「紙で欲しい」と請求された場合の社内対応フローが整っているか
一つでも「確認できていない」があれば、早めの対応をおすすめします。
開業後に相談受付を開始します
4条書面の記載事項の確認、補充書面の整備、フリーランス保護法との兼ね合いなど、取適法への対応は思った以上に確認事項が多く、実務担当者だけで判断するには難しい場面も少なくありません。
現在、2026年8月の行政書士事務所開業に向けて準備を進めています。
開業後は、取適法に対応した契約書・発注書の作成サポートをおこなう予定です。
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