「修理を頼まれた仕事だから、下請法とは関係ないだろう」——そう思っていませんか?実は、下請法から名称が変わった「取適法(取引適正化法)」でも、修理委託は規制の対象として位置づけられています。
知らないまま取引を続けていると、気づかないうちに違反になってしまうこともあります。「うちの取引は対象になるのか」「何に気をつければいいのか」、そんな不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
当事務所でも、取適法の勉強を進める中で、「修理委託」は業種を問わず関わりやすいテーマだと感じています。この記事では、そうして勉強しながら整理してきたことをもとに、修理委託の対象範囲と押さえておきたい注意点をわかりやすくまとめました。読み終える頃には、自社の取引が対象かどうか、迷わず判断できるようになるはずです。
取適法とは?下請法から名称が変わった背景
まず、取適法がどんな法律なのか、簡単に確認しておきましょう。
取適法は、下請法の内容を引き継ぐ形で2026年に施行された法律です。正式名称は「中小受託取引適正化法」といいます。
委託する側が受託する側に不当な要求をしないよう、取引のルールを定めているのが取適法です。修理委託も、このルールの対象に含まれています。
名称変更の理由(上下関係を感じさせない表現へ)
「下請」という言葉には、どうしても上下関係のイメージがつきまといます。
発注する側が「親」、受注する側が「下請」。そう呼ばれ続けてきたことで、対等な取引という意識が薄れてしまう面もあったのかもしれません。
今回の改正では、この呼び方そのものが見直されました。「委託事業者」「中小受託事業者」という、対等な立場を意識した表現に変わっています。
法律の中身だけでなく、言葉づかいまで変える。今回の改正では、そこまで見直しが行われています。
取適法が定める5つの委託取引
取適法が対象とする取引は、大きく5つに分かれます。
- 製造委託
- 修理委託
- 情報成果物作成委託
- 役務提供委託
- 特定運送委託(2026年の改正で新しく加わった類型)
この中の「修理委託」が、今回のテーマです。次の章で、詳しく見ていきましょう。
修理委託とは?取適法第2条第2項の定義をわかりやすく解説
取適法第2条第2項では、修理委託について次のように定義されています。
2 この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。
条文だけを読むと、少し身構えてしまう長さです。まずは、条文に出てくる基本の言葉を確認しておきましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 業として | 事業者が、ある行為を反復継続的に行っており、社会通念上、事業の遂行とみることができる場合 |
| 修理 | 元来の機能を失った物品に一定の工作を加え、元来の機能を回復させること |
| 物品 | 有体物 |
条文を整理すると、修理委託には次の2つの類型が含まれていることがわかります。
- 類型1:業として請け負う物品の修理の「全部又は一部」を他の事業者に委託すること
- 類型2:自社で使う物品の修理を業として行っている場合に、その修理の「一部」を他の事業者に委託すること
類型1は「全部又は一部」、類型2は「一部」に限られる。ここは条文の言い回しの違いとして、覚えておきたいポイントです。
修理委託にあてはまる2つの類型と具体例
条文の中身を、具体例をまじえてもう少し詳しく見ていきましょう。
類型①:他社から引き受けた修理を外注する場合
1つ目は、顧客から引き受けた修理を、別の事業者に委託する類型です。
いわば「修理の下請け」にあたります。

たとえば、自動車ディーラーがユーザーから事故車の修理を請け負い、板金塗装の作業を専門業者に委託するケース。家電メーカーが保証期間中の無償修理を修理業者に委託するケースも、これにあたります。
意外だったのが、修理委託にあたるかどうかは、物品を運んで直すかどうかとは関係がないという点です。中小受託事業者が発注元に出向いて修理する場合、物品を納入するという動作自体が発生しません。それでも、修理委託に該当しなくなるわけではないとされています。
類型②:自社で使う物の修理を外注する場合(反復継続していることがポイント)
2つ目は、自社で使っている物品の修理を日常的に自社内で行っている事業者が、その一部を外部に委託する類型です。
ポイントは「反復継続して自社修理を行っているかどうか」です。

たとえば、工場の保全担当が自社工作機械のメンテナンスを普段から自社で行っているとします。繁忙期だけ外部の修理業者に一部を依頼した場合、これも修理委託にあたります。
図のとおり、どちらの類型も、外注した部分が取適法の対象になります。類型①と類型②の違いは、結局のところ「発注元がいるかどうか」だと考えると整理しやすいです。この点をまず押さえておきましょう。
修理委託の対象になる例・ならない例(点検・清掃との違い)
「うちの取引は該当するのか」。ここで迷う方は少なくありません。
具体例を見ながら、感覚をつかんでいきましょう。
対象になる具体例(家電・自動車・機械設備の修理など)
- 家電製品の故障修理(部品交換をともなうもの)
- 自動車の板金・塗装修理
- 工作機械・設備の修繕作業
- ビルのエレベーター部品交換
いずれも、壊れた機能を「直す」作業です。この点が共通しています。
対象にならないケース(点検・清掃・スポット外注など)
一方で、次のようなケースは修理委託にあたりません。
単なる点検・清掃だけを委託する場合です。先ほどの条文にあったとおり、修理とは「元来の機能を失った物品に工作を加えて、機能を回復させること」を指します。状態を確認したり、汚れを取り除いたりするだけの点検・清掃は、この「修理」にはあたりません。
また、自社で使う物の修理をたまたま一度だけ外注したケースも要注意です。反復継続していない場合は、類型②の修理委託にはあたらない可能性があります。
「直しているか」「繰り返し行っているか」。この2つの視点で見ていくと、判断がしやすくなります。
とはいえ、実際の取引は一筋縄ではいかないことも多いものです。契約書にどう書かれているかによって、判断が分かれるケースもあります。契約書の内容整備は、こうした判断のズレを防ぐうえでも重要なポイントです。
修理委託と製造委託・役務提供委託との違い
修理委託は、他の委託取引と混同されやすい類型でもあります。ここで整理しておきましょう。
製造委託との違い
修理用の部品そのものを作ってもらう。これは製造委託です。
壊れた物を直す行為を委託する。これが修理委託です。
「作る」のか「直す」のか。ここが分かれ目になります。
勉強し始めたころは、「修理」という言葉に引っ張られて、この2つを混同しかけました。同じ「修理」がからむ場面でも、委託している中身が「部品を作ること」なのか「直す作業そのもの」なのかで、あてはまる類型がまったく変わってきます。ここは実務でも間違えやすいところだと思います。
役務提供委託との違い
役務提供委託は、サービスの提供を委託する取引です。ただし、自社が利用するサービスは対象外とされています。
修理委託は、あくまで「物品」という有体物が対象です。形のあるものを元の状態に戻す。この点が役務提供委託との違いです。
似ているようで、着眼点はまったく違います。
まとめ
- 取適法は下請法を引き継いで2026年に施行された法律
- 修理委託には「他社の修理を外注する類型」と「自社修理の一部を外注する類型」の2つがある
- 修理は「点検・清掃」とは異なり、機能回復をともなう作業を指す
- 製造委託・役務提供委託とは、着眼点の違いで見分けられる
- 実際の取引では、契約の実態によって判断が分かれることもある
ここまで読んで、「うちの取引、どっちの類型だろう」「これって修理委託にあたるのかな」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
取適法はまだ新しい法律です。条文を読んだだけで実務に落とし込み、正しく運用していくのは、決して簡単なことではないと感じています。契約書の文言ひとつで、判断が変わることもあります。
尼崎で行政書士事務所を運営しております。契約書の見直しや作成サポートを通じて、こうした判断に迷う場面でお役に立てるよう努めています。自社の取引が修理委託に当たるかどうか迷われたときは、ぜひお声がけください。
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