取適法(旧下請法)の支払期日と60日ルール|数え方・例外と違反しやすい支払サイト5つ【発注者向け】

下請法が取適法(中小受託取引適正化法)に変わって、9か月がたちました。発注書の様式は直したものの、「月末締め・翌々月払い」のような支払の決まりは昔のまま、という会社は少なくないはずです。

取適法では、代金の支払期日を、受け取った日から60日以内に決めなければなりません。いわゆる「60日ルール」です。ところが、自社の締め日と支払日をこのルールに当てはめてみると、思わぬところで期日を過ぎていることがあります。

この記事では、まず60日ルールの数え方を整理し、違反になりやすい5つの支払条件を、講習会テキストの事例とあわせて紹介します。後半では、自社で契約書と発注書を見直す手順と、行政書士に頼む場合に任せられる範囲もお伝えします。

なお、自社がそもそも取適法の対象になるのかがまだはっきりしない方は、先に資本金か従業員数か?取適法の対象取引を見極める方法をご覧ください。

この記事を書いている事務所

行政書士松井純子行政書士事務所

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目次

取適法(下請法)の違反でいちばん多いのは支払遅延|令和7年度は52.4%

公正取引委員会は、2026年6月10日に令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の運用状況を公表しました。勧告や指導の対象になった違反のうち、禁止行為に当たるもの(実体規定違反)は7,228件ありました。

そのうち支払遅延が3,787件、全体の52.4%で、2位の代金の減額(1,323件)を大きく引き離しています(公正取引委員会「令和7年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組」)。

支払遅延と聞くと、資金繰りに困った会社が代金を払えなくなる場面を想像するかもしれません。けれど実際に指導されているのは、払うつもりはあったのに、社内の締め日や支払のサイクルが60日を超えていたというケースがほとんどです。

法律が変わったばかりで、新しいルールをすぐに正しく理解できている会社は、そう多くないはずです。60日ルールを正しく理解できていなかっただけ、というのは十分にありうる話だと思います。

つまり、悪意がなくても、支払条件の決め方ひとつで違反になります。裏を返せば、契約書と発注書の支払条件を一度きちんと見直しておけば、いちばん多い違反を防げるということです。

取適法の支払期日は受領日から60日以内|60日ルールの基本

起算日は「受け取った日」|検査や請求書は関係ない

取適法3条は、代金の支払期日を、給付を受領した日から数えて60日以内で、しかもできる限り短い期間内に定めるよう求めています。数えるときは、受け取った日を1日目に入れます。

ここでいう「受領した日」は、検査をしたかどうかに関係なく、品物を受け取って自分の管理下に置いた日です。デザインやプログラムなどのデータなら、メールなどで受け取って自社のパソコンやサーバーに保存した日が、受領した日になります。

清掃や保守、運送のような役務提供委託では「受け取る」という考え方がないため、役務の提供を受けた日(日数がかかる場合は終わった日)から数えます。

60日ルールの例外? 運用は「2か月以内」で31日の月も1か月

「毎月末日締め、翌月末日払い」にすると、6月1日に受け取った分の支払は7月31日、受け取った日から61日目になります。60日を1日超えてしまいますが、これは違反として扱われていません。

公正取引委員会は「受領後60日以内」を「受領後2か月以内」として運用しており、31日の月も30日の月も同じ1か月と数えるためです(中小受託取引適正化法テキスト 令和7年11月版、62ページ)。

条文に「60日」とある以上、受け取った日から1日ずつ数えなければならないのかと思うと、それだけで大変です。私が受けた取適法の講習会で、運用上は2か月として扱い、1月31日に受け取った分なら3月31日までに払えばよい、という説明を聞いたときは安心しました。

支払期日の書き方|「〜まで」「〜以内」は認められない

テキストのQ&A(Q67)は、支払期日の書き方について次のように整理しています。

書き方認められるか
「○月○日まで」認められない
「納品後○日以内」認められない
「○月○日」認められる
「毎月末日納品締切、翌月○日支払」認められる

「まで」「以内」は、支払の期限を示しているだけで、どの日に払うのかが特定できないからです。普段の会話なら同じ意味に聞こえますが、法律の上では大きな違いになります。

「〜まで」「〜以内」は、一見すると問題のない書き方に見えます。けれどそれでは、示している期限が60日ルールを守ったものなのかどうか、判別がつかなくなるおそれがあります。払う日を一つに決めておけば、ルールを守れているかを誰でも確かめられます。

支払期日を定めないとどうなる? 遅延利息は年14.6%

支払期日を定めなかった場合は、受け取ったその日が支払期日とみなされます。60日を超える日を決めていた場合は、受け取った日から数えて60日を過ぎた日の前日が支払期日になります(3条2項)。

そのうえで、支払期日に払わなかった委託事業者は、受け取った日から60日を過ぎた日から実際に払う日まで、年14.6%の遅延利息を払わなければなりません(6条)。当事者どうしで「利息はなしで」と合意していても、この義務は消えません。

当事者が納得しているのに、と厳しく感じるかもしれません。けれど、仕事を受ける側はどうしても立場が弱くなりがちで、「利息はなしで」と言われれば断りにくいものです。合意があっても消えないルールで法律が守ろうとしているのは、その立場の弱い受託事業者です。

60日ルール違反になりやすい支払サイト・支払条件5つ

ここからは、講習会テキストに載っている違反事例をもとに、うっかり違反になりやすい支払条件を5つ紹介します。自社の支払条件と見比べながら読んでみてください。

1. 翌々月払いの支払サイト(締め日から支払日まで1か月超)

もっとも多いのが、支払サイト(受け取ってから支払うまでの期間)そのものが2か月を超えているケースです。テキストには、「毎月25日納品締切、翌々月5日支払」としていた会社の事例が載っています(69ページ、事例③)。

この決まりだと、6月26日に受け取った分は7月25日の締めに入り、支払は9月5日になります。受け取ってから2か月を10日ほど過ぎています。「月末締め、翌々月末払い」なら、月初に受け取った分の支払は3か月後です。

月単位で締めて払う場合、締め日から支払日までは、おおむね1か月以内に収める必要があります。日付の計算がもともと苦手な私は、受け取った日から支払日までをカレンダーで目で追い、日数を数えて確かめました。

2. 検収日を起算日にしている(検収締め)

「納品されたものは、検査に合格してはじめて受け取ったことにする」という運用をしている会社は多いはずです。ところが取適法では、検査の有無にかかわらず、受け取って自社の管理下に置いた日が起算日になります。

テキストには、月末締め・翌月末払いの決まり自体は問題がないのに、検査が翌月にずれ込んだ分を翌月の納品として計上していたため、60日を超えてしまった事例があります(68ページ、事例①)。

検査に日数がかかる取引では、検査期間を見込んだうえで支払日を決めておく必要があります。

なお、デザインやプログラムなどの情報成果物では、あらかじめ「一定の水準を満たしていることを確認した時点で受け取ったことにする」と合意しておけば、データを受け取っただけでは受領にならない、という例外があります。

ただし、明示した納期が来れば、確認が終わっていなくても、その日が受領日になります(63ページ)。

3. 請求書が届くまで支払わない

経理の流れとして、「請求書が来てから支払の手続きに入る」という会社は珍しくありません。けれどテキストのQ&A(Q77)は、請求書が提出されたかどうかにかかわらず、決めた支払期日までに払わなければならないとしています。

取引先からの請求書が遅れて社内の決裁が間に合わなかった、というのは、支払が遅れた理由として認められません。請求額をまとめて知らせてもらうための十分な期間をあらかじめ確保し、遅れているときは早めに催促するのが、委託事業者の側の役目になります。

発注する側に、決裁の手順や締めの都合があることはわかります。ただ、それは社内の事情です。仕事を終えて代金を待っている取引先に向ける言い訳にはなりません。

同じように、締め日の間近に納品されたものの事務処理が締め日を過ぎ、翌月の締めに回されていた事例もあります(69ページ、事例⑤)。経理の処理の都合で、受け取った日がずれることはありません。

4. 支払日が休日のときの翌営業日払い(書面の合意がない)

支払日が土日や祝日に当たり、銀行が休みのため翌営業日に払った。これも、条件を満たしていないと支払遅延になります。

金融機関の休業日による順延が認められるのは、順延が2日以内で、しかもあらかじめ書面などで合意している場合に限られます(63ページ)。テキストには、合意がないまま翌営業日に払っていたため遅延とされた事例が載っています(69ページ、事例⑦)。

「土日なら月曜に払う」のは、誰にとっても当たり前の感覚です。だからこそ、契約書や発注書に一行書いておくのを忘れがちな部分でもあります。

5. 手形・でんさいでの支払、振込手数料の差し引き

2026年1月1日以降に発注した取引では、手形で代金を払うことができなくなりました(5条1項2号)。手形を渡すことそのものが、支払遅延に当たります。

電子記録債権(でんさい)やファクタリングを使う場合も、支払期日に代金の満額を現金で受け取れないものは認められません。決済の手数料を取引先に負担させることも、合意があっても違反です(Q81)。

振込手数料を代金から差し引くことも、同じく合意の有無にかかわらず違反になると説明されています(適正取引講習会テキスト、19ページ)。

下請法の時代は、あらかじめ書面で合意していれば差し引いてもよいとされていたため、古い契約書に「振込手数料は乙の負担とする」と残っていることがあります。数百円の手数料でも、合意があれば許される、とはならないのは、遅延利息と同じ理由です。

契約書・発注書の支払条件を自社で見直す4つの手順

ここまでの内容を、自社で進める手順に並べ直すと、次のとおりです。

  1. 取引を洗い出す:取適法がかかる取引先を確認し、取引の種類(製造・修理・情報成果物・役務・運送)ごとに分ける
  2. 支払条件を書き出す:締め日、支払日、検査の扱い、休日の扱い、支払方法、手数料の負担を、基本契約書・発注書・社内の経理ルールから拾い出す
  3. カレンダーで確かめる:月の初日に受け取った場合と、締め日の翌日に受け取った場合の2つで、支払日が2か月以内に収まるかを確かめる
  4. 書類と運用を直す:支払期日の書き方、休日の順延、手数料の負担を契約書と発注書に反映し、経理の担当者にも周知する

取引先が少なく、支払のサイクルが1種類しかない会社なら、テキストを横に置いて自社で進めることは十分にできます。手順3で問題が見つからなければ、残る作業は条項の言葉を直すことだけです。

専門家に頼むつもりの方も、手順1の取引の洗い出しと、手順2の支払条件の書き出しは、できれば自社で進めておいてください。そのうえで、途中で迷ってしまったときは、そこからでもできる限りお手伝いします。

ただ、支払条件は、契約書・発注書・経理のルールの3か所に散らばっていることがほとんどです。どれが本当の支払条件なのかを突き合わせる作業は、思った以上に手間がかかります。基本契約書と発注書の支払条項を、取適法に合わせて見直すお手伝いもしています。

支払条件のほかに、発注書に書くべき事項(4条明示)がそろっているかも、あわせて確かめておくと安心です。記載事項の一覧は、取適法 3条書面から4条書面へ|記載事項12項目・電子交付・罰則をわかりやすく解説にまとめています。

取適法対応の契約書の見直しを行政書士に頼む場合|任せられる範囲・費用

次のような場合は、専門家に任せたほうが早く、確実です。

  • 取引の種類が多く、製造・情報成果物・役務などで支払のサイクルが分かれている
  • 基本契約書と個別の発注書で、支払条件の書き方が食い違っている
  • 下請法の時代のひな形を、そのまま使い続けている
  • 同じ取引先にフリーランスも含まれ、フリーランス法との関係も整理したい

任せられること

行政書士は、契約書などの権利義務に関する書類の作成を業務としています。支払条件の見直しでいえば、今の契約書・発注書のチェック、支払期日や休日の順延、手数料の負担などの条項の修正案づくり、新しい基本契約書や発注書のひな形づくりまでをお引き受けできます。

役務提供委託で月単位の締めを使うときの条件のように、条項の一文を直すと、明示事項や別の条項とのつじつまが崩れやすい部分もあります。支払条項を含めた契約書全体の整合まで確かめるのが、専門家に頼む利点です。

当事務所の契約書業務のページに掲載している料金は、次のとおりです(2026年10月時点)。

内容料金の目安
契約書の確認・修正10,000円〜30,000円程度
業務委託契約書の作成33,000円〜
チャット相談プラン7日間 8,800円/30日間 16,500円

取適法に合わせた見直しは、書類の数や取引の形によって変わるため、ヒアリングのあとにお見積りをお出ししています。

任せられないこと

すでに取引先との間で、支払の遅れや遅延利息をめぐって争いになっている場合、相手方との交渉や代理は弁護士の業務です。行政書士はお引き受けできません。

公正取引委員会や中小企業庁から調査や指導を受けている場合の対応も、弁護士へのご相談をおすすめします。また、支払のサイクルを変えるための経理システムの改修や、資金繰りのご相談は、それぞれの専門家の領域です。行政書士が力になれるのは、トラブルになる前に書類を整えておく段階です。

依頼の流れ

  1. お問い合わせ
  2. ヒアリング(今の書類と、締め日・支払日などの運用をうかがいます。オンラインまたは対面)
  3. お見積り・ご契約
  4. チェックと修正案の作成
  5. 納品(修正後の書式と、運用の注意点をお渡しします)

まとめ

  • 取適法の違反でいちばん多いのは支払遅延で、令和7年度は実体規定違反の52.4%を占めた
  • 支払期日は、受け取った日から60日(運用上は2か月)以内の、できる限り短い日に決める
  • 期間は検査や請求書に関係なく、受け取った日から数える
  • 「〜まで」「〜以内」は支払期日として認められず、決めていなければ受け取った日が支払期日になる
  • 翌々月払い、検査を基準にした計上、請求書待ち、書面のない休日の順延、手形や手数料の差し引きは、違反になりやすい
  • 取引の種類が多い、書類どうしの支払条件が食い違っている、という場合は専門家に任せるのが早い

支払条件の見直しをご検討の方へ

60日ルールは、取引先の資金繰りを守るためのルールです。代金が予定どおりに入ってこなければ、従業員の給料も材料代も払えません。

入金を待っている側は、しっかり働いた結果として、その日を待っています。支払期日をなあなあで済ませず、決めた日にきっちり払うこと。それが、取引先との信頼を積み重ねることにもなります。

尼崎で行政書士事務所を開いており、全国からオンラインでご相談をお受けしています。阪神間・大阪府・京都市内であれば、対面でのご相談も可能です。

「うちの締め日と支払日は大丈夫なのか、まず確かめたい」という段階からでもかまいません。取適法に合わせた契約書・発注書の支払条件の見直しについて、お気軽にお問い合わせください。

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取適法の支払期日(60日ルール) 3問クイズ
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松井 純子

松井純子行政書士事務所(尼崎市)

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