「フリーランスに仕事を頼んでいるけれど、うちの会社もフリーランス法の適用対象になるのだろうか」。
そんな疑問から、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。
フリーランス法の適用対象になるかどうかは、取引相手が「特定受託事業者」にあたるかどうかで決まります。
そして発注する側であるあなたの会社が「特定業務委託事業者」にあたるかどうかで、負う義務の重さが変わってきます。
「従業員がいないから関係ない」「個人事業主に頼んでいるだけだから大丈夫」。
そう思い込んでいると、知らないうちに違反状態になっているケースもあるので、注意が必要です。
正直なところ、この法律を初めてきちんと読んだときは、条件がいくつも組み合わさっていて、なかなか複雑だと感じました。
それでも、一つずつ条件をほどいていけば、決して難しい話ではありません。
この記事は、フリーランス法について改めて調べ直し、自分なりに整理し直した内容をまとめたものです。
学びながら書いた分、実際に条文を追ったときにつまずきやすいポイントも意識しながらまとめられたと思います。
この記事では、フリーランス法の適用対象となる条件から、発注事業者が守るべき7つの義務、自社がどのパターンに該当するかを判定する方法まで、図解を交えて順番に解説します。
最後まで読めば、「うちの会社は何をすればいいのか」がはっきり見えてくるはずです。
フリーランス法の適用対象とは?結論を先に解説
フリーランス法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、2024年11月1日に施行された法律です。
フリーランスとして働く人が、発注者との取引で不利な立場に置かれないようにすることを目的としています。
フリーランス法の適用対象になるのは、次の2つの条件を両方満たす取引です。
- 発注される側が「特定受託事業者」にあたること
- 発注する側との間に「業務委託」の関係があること
つまり、フリーランス法の適用対象かどうかは「誰に」「どんな形で」仕事を頼んでいるかで決まるということです。
それぞれの条件を、次から詳しく見ていきましょう。
フリーランス法の適用対象になる人・ならない人
「特定受託事業者」とは、従業員を使わない事業者のこと
フリーランス法で保護される「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方であって、従業員を使用していない事業者を指します。
ポイントは、次の2種類が含まれることです。
- 従業員を使わない個人事業主
- 代表者以外に役員がおらず、従業員も使わない「一人社長」の法人
「法人化しているなら対象外だろう」と考える方もいますが、これは誤解です。
実態が一人で完結している事業であれば、個人事業主と同じ扱いを受けます。
この線引きは、法律を学び始めたころの自分にとっても、少しややこしく感じたところでした。
一方で、従業員を雇いながら事業を行っている人や、消費者を相手に商売をしている人は、フリーランス法上の「特定受託事業者」にはあたりません。
発注する側は「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」に分かれる
フリーランスに業務委託をする側は、まず「業務委託事業者」と呼ばれます。
このうち、従業員を使用している事業者は「特定業務委託事業者」となり、より重い義務を負います。
つまり発注事業者に課される義務の重さは、次の2つの条件の組み合わせで決まる仕組みです。
- 従業員を使用しているかどうか
- 契約期間の長さ
この組み合わせについては、後ほど図解でまとめて確認します。
法律が何をしたいのかは、条文を読んでいくとなんとなく見えてきます。
今まで立場の弱かったフリーランスを守りたいのだろうな、と思います。
ただ、発注する側からすると、従業員を一人雇っただけで急に義務が増えるのは、正直戸惑う部分もあるはずです。
このあたりは、フリーランスを守ることと発注事業者の負担のバランスをどう取るか、という問題なのだと思います。
消費者との取引・自社商品の売買は適用対象外
フリーランス法の適用対象は、あくまで「事業者から事業者への業務委託」です。
次のようなケースは対象外になります。
| ケース | 適用対象か |
|---|---|
| 企業がフリーランスに宣材写真の撮影を依頼 | 対象 |
| 消費者が個人カメラマンに家族写真を依頼 | 対象外(消費者取引) |
| フリーランスが自作の写真集をネット販売 | 対象外(委託ではなく売買) |
「フリーランスとの取引だから何でも法律が関係する」わけではありません。
業務委託という契約の形をとっているかどうかが、判断の分かれ目になります。
フリーランス法の適用対象になったら守るべき7つの義務【一覧表】
フリーランス法の適用対象になった発注事業者には、最大で7つの義務が課されます。
条文の順番どおりに一覧で確認しましょう。
| No. | 義務 | 主な内容 | 発生条件 |
|---|---|---|---|
| ① | 取引条件の明示 | 業務内容・報酬額・支払期日などを書面等で明示 | 業務委託事業者であれば全員 |
| ② | 報酬支払期日の設定 | 受領から60日以内のできるだけ早い期日に支払う | 従業員を使用している場合 |
| ③ | 禁止行為の遵守 | 受領拒否・報酬減額・買いたたきなど7つの行為を禁止 | 従業員を使用+1ヶ月以上の委託 |
| ④ | 募集情報の的確表示 | 虚偽・誤解を招く表示を禁止し、最新の内容を保つ | 従業員を使用している場合 |
| ⑤ | 育児介護等への配慮 | 申し出に応じて必要な配慮をする | 従業員を使用+6ヶ月以上の委託 |
| ⑥ | ハラスメント対策 | 相談体制の整備など必要な措置を講じる | 従業員を使用している場合 |
| ⑦ | 中途解除の予告・理由開示 | 原則30日前までに予告し、理由開示にも対応 | 従業員を使用+6ヶ月以上の委託 |
数が多く感じるかもしれません。実際、初めて一覧で見たときは自分も面食らいました。
しかし、すべての義務がすべての発注事業者に一律で課されるわけではない点は、覚えておいてください。
どの義務が自社に関係するかは、次の章で判定できます。
特に見落としやすい義務4つ
- ①取引条件の明示:従業員の有無を問わず必ず課される義務です。口頭だけのやり取りはリスクがあります。
- ②報酬支払期日:60日以内という定めを、慣習の支払サイクルのまま見落としがちです。
- ③禁止行為:「買いたたき」だけでなく「受領拒否」にも注意が必要です。
- ⑦中途解除の予告:契約更新で通算期間が6ヶ月を超えた場合も対象になります。
契約書や発注書を整えておくことが、①の義務を満たす一番の近道です。
以前、在宅の仕事を少しだけ請け負っていたとき、契約書がどこにあるのか分からず困った記憶があります。クライアントから明示的に示されることはなく、受け取る側からすると、契約条件がどこにあるのか分からないというのは、それだけで不安になるものだと感じました。
②の報酬支払期日は、「月末締め翌々月末払い」のような、慣習としてなんとなく続けている支払サイクルのまま、気づかないうちに60日を超えてしまっているケースが意外と多いのではないでしょうか。
③の禁止行為では、フリーランスに依頼した成果物を発注者側の都合でキャンセルしてしまった経験がある方もいるかもしれません。フリーランスを守るためにこの行為が禁止された以上、発注する側も発注の仕方そのものを見直す必要があるのだと思います。
【図解】フリーランス法の適用対象を3パターンでチェック
自社がどこまで義務を負うのかは、①従業員の有無、②契約期間の長さ、という2つの条件の組み合わせで決まります。
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のリーフレットをもとに、3つのパターンに整理しました。
文章だけで理解しようとすると条件を追いきれなくなるので、図にして整理してみると、自分自身、頭の中がかなりすっきりしました。

| パターン | 発注事業者の要件 | 対象となる義務 |
|---|---|---|
| パターン1 | 従業員を使用していない(一人社長・個人事業主など) | ①のみ |
| パターン2 | 従業員を使用している | ①②④⑥ |
| パターン3 | 従業員を使用し、一定期間以上の業務委託を行う | ①〜⑦すべて |
パターン3の「一定期間」は義務によって異なります。
③の禁止行為は1ヶ月以上、⑤の育児介護等への配慮と⑦の中途解除予告は6ヶ月以上の契約が対象です。契約更新による通算期間がこの基準を超える場合も含まれます。
自社がフリーランス法の適用対象かを確認する3ステップ
ここまでの内容を踏まえて、自社の取引を実際にチェックしてみましょう。
- 取引相手を確認する 委託先が従業員を使わない個人事業主・一人社長かどうかを確認します。
- 自社の状況を確認する 自社が従業員を使用しているか、契約期間が1ヶ月・6ヶ月を超えるかを確認します。
- 該当するパターンを特定する 上記の表と照らし合わせ、パターン1〜3のどれにあたるかを判定します。
「今は従業員がいないから関係ない」という場合でも油断は禁物です。
採用や契約の長期化によって、義務の範囲は簡単に広がっていきます。
事業のステージが変わるたびに、また同じチェックをする必要があるのだろうな、と思っておくとよさそうです。
自社での判断に迷う場合は、契約書の専門家に相談するのも一つの方法です。
まとめ:フリーランス法の適用対象を正しく理解し、義務に備えよう
この記事のポイントを振り返っておきましょう。
- フリーランス法の適用対象になる「特定受託事業者」は、従業員を使用しない事業者(一人社長を含む)
- 発注事業者が負う義務は、従業員の有無と契約期間の長さで、①のみ/①②④⑥/①〜⑦すべて、の3パターンに分かれる
- 消費者との取引や自社商品の売買には、フリーランス法は適用されない
- 従業員を雇う、契約が長期化するといった変化のたびに、義務の範囲を見直す必要がある
法律の狙いそのものは、理解できます。立場の弱いフリーランスを守りたい、という思いなのだと思います。
とはいえ、発注する側にも日々の業務があるなかで、条件ごとに変わる義務をすべて正確に把握するのは、なかなか骨が折れる作業のはずです。
フリーランスに仕事を頼むということは、その人を一人のプロとして迎えるということだと思います。
だとすれば、契約書はわかりやすく提示するべきですし、相手がまだ経験の浅いフリーランスであれば、なおさら丁寧に渡すべきではないでしょうか。誰にでも初心者だった時代があり、その先に一流のフリーランスがいるのだと思います。
「うちは大丈夫」と思い込まず、まず自社の取引がどのパターンにあたるかを確認すること。
それが、フリーランス法の適用対象をめぐるトラブルを防ぐ第一歩になります。
ご相談をお待ちしています
フリーランス法への対応は、義務の内容を理解するだけでなく、契約書や発注書という実際の書式に落とし込む作業までが本番だと感じています。
「自社の取引がどのパターンにあたるか判断がつかない」「契約書のひな形を作り直したい」という悩みは、ぜひご相談いただければと思います。
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