精神障害者保健福祉手帳を取ろうかどうか、迷っておられるでしょうか。主治医や窓口の方に勧められたものの、いざ申請となると気が進まない。そういう段階でこの記事にたどりつく方が、たぶん一番多いのだろうと思います。
尼崎市にお住まいなら、先にひとつだけお伝えしておきたいことがあります。この手帳があると、市内のバスに無料で乗れます。しかも3級から対象です。通院のたびに往復の運賃を払っている方にとっては、それだけでも申請する理由になるのではないでしょうか。
この記事では、尼崎市で実際に受けられる支援を、対象等級と窓口まで含めてまとめました。気になっておられるであろうデメリットについても、隠さずに書いています。制度というのは、知っている人だけが得をする形になりがちです。必要な人に届かないまま存在しているだけ、という状態はもったいないと思うので、できるだけ具体的に書きました。
長い記事になりましたので、一度に読み通していただかなくて構いません。気になるところだけ、目次から選んでいただければ十分です。
お急ぎの方は、こちらからどうぞ
読まれる方の状況によって、必要なところは違います。目安として挙げておきます。
- 取ろうかどうか迷っている → まずは「尼崎市で受けられるメリットは6つ」から
- デメリットが気になって踏み切れない → 「デメリットは2つだけです」へ。詳しくはこちらの記事で不安ごとにお答えしています
- もう取ると決めた → 「尼崎市での申請の流れ」へ。手順の詳細は申請方法の記事にまとめました
- 障害年金との違いがわからない → 「手帳・障害年金・自立支援医療は別の制度です」へ
- ご家族の立場で調べている → 「ご本人が動けないときは」と、最後の「親なきあと」の項をご覧ください
精神障害者保健福祉手帳とは何か
精神障害者保健福祉手帳は、精神の病気のために日常生活や社会生活が長く制限されている、ということを公的に証明するカードです。病気そのものを証明するというより、「生活にどれくらい支障が出ているか」を示すもの、と考えていただくとイメージしやすいかもしれません。
病名ではなく、生活の支障で判断されます
対象となるのは、うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害、発達障害、てんかんなど、幅広い精神疾患です。ただし、病名がついていれば自動的に取れるというものではありません。同じうつ病であっても、日常生活をどの程度こなせているかによって、判断は変わってきます。
条件として決まっているのは、初診日から6か月以上たっていることだけです。逆にいえば、通院を始めたばかりの時期は申請できません。
等級は1級から3級まで
主治医が書いた診断書をもとに、兵庫県が等級を判定します。おおよその目安は次のとおりです。
| 等級 | おおよその状態 |
|---|---|
| 1級 | 日常生活を送ることが、ひとりでは難しい |
| 2級 | 日常生活に、著しい制限がある |
| 3級 | 日常生活や社会生活に、制限がある |
3級が最も軽い等級ということもあって、「自分は3級だろうから、たいしたものは受けられないのでは」と考えて申請をためらう方がおられます。けれど尼崎市の場合、3級で受けられる支援はかなりあります。バスも電車も、軽自動車税の減免も、すべて3級が対象です。取らずに過ごすのは、もったいない話です。
有効期間は2年で、返すこともできます
一度取ったら一生ついてまわるもの、というイメージを持たれている方が少なくありません。実際にはそうではなく、有効期間は2年間です。2年ごとに更新の手続きをし、更新しなければそのまま失効します。体調が回復して必要なくなれば、自分から返すこともできます。入り口も出口も自分で決められる制度だ、と考えていただいて差し支えありません。
尼崎市で受けられるメリットは6つ
細かい話に入る前に、全体像をお見せしておきます。
| メリット | 対象等級 | |
|---|---|---|
| ① | 尼崎市内のバスが無料になる | 1級・2級・3級 |
| ② | 電車の運賃が5割引になる | 1級・2級・3級 |
| ③ | 医療費の自己負担が軽くなる | 1級・2級 |
| ④ | 税金が軽くなる | 等級により異なる |
| ⑤ | NHK受信料・携帯電話代が安くなる | 条件により異なる |
| ⑥ | 障害者雇用枠に応募できる | 1級・2級・3級 |
ご覧のとおり、6つのうち4つが3級から対象です。ひとつずつ見ていきます。
メリット① 尼崎市内のバスが無料になります
尼崎市には「障害者等乗合自動車特別乗車証」という制度があります。名前は長いのですが、要するにバスの無料パスです。これは尼崎市にお住まいの方だけが受けられるもので、しかも精神障害者保健福祉手帳の3級から対象になっています。
意外と知られていない制度で、手帳を持っていながら使っていない方もおられるようです。
この記事を書くために調べていて一番驚いたのが、これでした。手帳のメリットというと、税金の控除や鉄道の割引といった全国共通のものばかりが目につきます。私も最初はそのつもりで調べていました。ところが尼崎市には、それとは別に市が独自にやっている支援がある。しかも3級から使える。金額にすれば、控除より大きくなる方もいるはずです。
こういう制度こそ、真っ先に知らせてほしいものだと感じました。
無料になる範囲は等級によって変わります
1級の方は、本人と介護人の両方が無料になります。2級と3級の方は、本人が無料です。使えるバス会社は阪神バス、阪急バス、尼崎交通事業振興の3社で、対象路線において尼崎市内の停留所で乗り、市内で降りる場合に限られます。
市外へ出る区間は対象外ですが、通院も買い物も市内で完結するという方は多いはずです。日常の移動をカバーできるだけでも、負担はずいぶん違ってきます。
申請は無料で、窓口も複数あります
新規の交付には費用がかかりません。なくして再交付を受ける場合のみ1,000円が必要です。申請できるのは、本庁の福祉課、南部・北部保健福祉センターの福祉相談支援課、南部・北部地域保健課、それに各地区の保健・福祉申請受付窓口です。手帳の申請窓口とも近いので、まとめて済ませてしまうのが現実的でしょう。
どれくらい効くのか、計算してみます
たとえば週に1回通院していて、往復の運賃が500円だとします。ひと月で2,000円、年間では2万6,000円ほどになる計算です。ここに買い物や役所の手続きが加われば、金額はさらに増えていきます。
手帳の申請には診断書代がかかりますが、バスの運賃だけで回収できてしまう方が多いのではないでしょうか。
メリット② 電車の運賃が5割引になります
鉄道の割引は、2025年4月1日から始まったばかりの新しい制度です。ご存じない方も多いはずです。
というのも、身体障害者手帳と療育手帳にはずっと以前から鉄道の割引がありましたが、精神障害者保健福祉手帳だけは長いあいだ対象外でした。同じ「障害者手帳」という名前でありながら、精神だけが外されていたわけです。事業者側にも事情はあったのでしょうが、当事者の立場からすれば、なかなか納得しにくい話だったろうと思います。
2025年4月、JRグループが精神障害者割引を導入したことで、この差はようやくなくなりました。制度が変わるまでには長い時間がかかりましたが、変わったこと自体は素直に喜んでいい話だと思います。
1級は第1種、2級と3級は第2種
手帳の等級は、そのまま鉄道会社の区分に対応します。1級が第1種、2級と3級が第2種です。割引率はいずれも5割になります。
JRの場合、第2種の方がひとりで乗るときは、片道100kmを超える区間が割引の対象です。第1種の方であれば、介護者と一緒に乗る場合は距離の制限なく割引を受けられます。阪急電鉄と阪神電車にも同様の割引がありますが、条件は会社ごとに異なりますので、ご利用の前に各社にご確認ください。
手帳に「記載」がないと使えません
ここが見落とされやすいところです。割引を受けるには、手帳に「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額」という記載が入っている必要があります。この記載がなければ、窓口で割引は受けられません。
| 手帳を取得・更新した時期 | 記載の有無 |
|---|---|
| 2025年1月以降 | 自動で記載されています |
| それより前 | 記載がありません |
記載がない場合でも、更新の時期を待つ必要はありません。手帳を持って市の窓口へ行けば、その場でスタンプを押してもらえます。診断書も手数料も要りません。
制度が始まって1年以上たちますが、記載がないまま手帳を持ち歩いている方はまだ相当おられるはずです。心当たりのある方は、一度手帳を開いて確認してみてください。
メリット③ 医療費の自己負担が軽くなります(1級・2級)
尼崎市には「障害者医療費助成」という制度があり、対象になると医療費の自己負担に上限が設けられます。ただし、精神障害者保健福祉手帳では1級と2級のみが対象で、3級は含まれていません。
制度である以上、どこかに線を引かなければ成り立たないというのは理解できます。ただ、線の内側と外側とで暮らしの重さがそれほど変わるわけでもないだろう、とも思います。3級の方が「対象外」と知ったときの気持ちは、想像がつきます。
3級の方は、後ほど説明する自立支援医療をお使いください。こちらは等級の条件がなく、通院の医療費が原則1割負担になります。実質的な負担軽減としては、こちらのほうが効くという方も多いはずです。
所得の条件があります
対象となるには、次のいずれかに当てはまる必要があります。
- 低所得……本人・配偶者・扶養義務者が市民税非課税で、年金と他の所得の合計が82万6,500円以下
- 一般……本人の市民税所得割額が23万5千円未満
自己負担の上限額
| 区分 | 外来 | 入院 |
|---|---|---|
| 低所得 | 1医療機関・1薬局につき1日400円(月2回まで) | 1割負担・月1,600円まで |
| 一般 | 1医療機関・1薬局につき1日600円(月2回まで) | 1割負担・月2,400円まで |
注目していただきたいのは「月2回まで」という部分です。同じ月に3回目以降通院しても、窓口での負担は生じません。症状が重くて通院が増える時期ほど効いてくる仕組みになっています。
もうひとつ、見落とされやすいのが「1医療機関1薬局あたり」という数え方です。病院と薬局は別々に数えます。病院で600円、薬局で600円という計算になりますが、裏を返せば、薬局にも上限が設けられているということです。ここが次にお話しする話につながります。
2026年7月から、自立支援医療との併用ができるようになりました
これは新しい話です。まだあまり知られていませんので、少し丁寧に書きます。
これまでは、自立支援医療のような公費負担医療を使っている場合、窓口ではそちらが適用されて終わりでした。そこに残った自己負担額へ、さらに福祉医療(障害者医療費助成)を重ねることはできませんでした。
2026年7月1日から、この重ねがけができるようになりました。 自立支援医療を適用したあとに自己負担額が残る場合、その金額に対して障害者医療費助成が適用されます。
二段構えで下がる、ということです
言葉だけではわかりにくいので、実際の場面で考えてみます。精神科で処方された薬を、自立支援医療で登録した薬局で受け取るときの話です。
自立支援医療を使っていれば、窓口の負担は原則1割で済みます。それでも、薬の種類が多かったり、何週間分かをまとめて出してもらったりすると、2,000円から3,000円ほど払うことがあります。毎月のことですから、決して小さな金額ではありません。
ここに障害者医療費助成が重なると、上限が効きます。
| 薬局の窓口で払う金額 | |
|---|---|
| 自立支援医療だけの場合 | 2,000〜3,000円になることも |
| 障害者医療費助成を重ねた場合 | 600円 |
一般区分の方の数字です。低所得区分の方であれば400円になります。
病院の窓口でも同じことが起こります。診察分の自己負担が600円を超えていれば、そこも600円が上限です。病院と薬局は別々に数えますので、診察と薬を同じ日に済ませたなら、その日の支払いは合わせて1,200円ということになります。
そして「月2回まで」ですから、同じ月に3回目の通院をしても、そこから先の負担は生じません。
対象になるのは1級・2級の方です
念のため確認しておきます。この併用が効くのは、障害者医療費助成の対象になっている方、つまり精神障害者保健福祉手帳が1級か2級で、所得の条件を満たしている方です。
3級の方は障害者医療費助成の対象外ですので、この重ねがけは使えません。自立支援医療の1割負担までが上限になります。
薬の量が多い方、複数の医療機関にかかっている方ほど、この改正の効き方は大きくなります。該当しそうだと思われたら、受給者証をお持ちのうえで、一度福祉医療課にご確認ください。
申請の窓口
申請の窓口は、市役所の福祉医療課、南部・北部保健福祉センターの福祉相談支援課、各地区の保健・福祉申請受付窓口です。マイナ保険証(または資格確認書)、障害者手帳、振込先のわかる通帳などをお持ちください。
交付された受給者証は、マイナ保険証や資格確認書に添えて、病院や薬局の窓口で提示してください。自立支援医療の受給者証もあわせて出す形になります。兵庫県内の医療機関・薬局で使えます。
メリット④ 税金が軽くなります
税金の話は難しそうに聞こえますが、実際にやることは申告書の欄に記入するだけです。しかも一度手続きをすれば、翌年以降も同じ作業を繰り返すだけで効き続けます。地味ですが、長い目で見ると大きい支援です。
所得税と住民税の障害者控除
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 障害者(2級・3級) | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者(1級) | 40万円 | 30万円 |
控除というのは、税金の計算のもとになる金額から差し引くことです。差し引かれた分だけ、納める税金が少なくなります。
ご家族の扶養に入っている場合は、扶養しているご家族の税金が軽くなります。同居している特別障害者を扶養しているケースでは、所得税75万円、住民税53万円とさらに大きな控除になります。
手続きは、会社員の方なら年末調整、それ以外の方は確定申告です。申告書の障害者控除の欄に記入し、手帳のコピーの提出を求められることもあります。
住民税が非課税になる場合もあります
ご本人が障害者で、前年の合計所得金額が135万円以下であれば、住民税が非課税になります。これは見逃せないところで、住民税が非課税になると他の制度の負担も連動して軽くなることがあるからです。
軽自動車税の減免は1級から3級まで
尼崎市の軽自動車税の減免は、1級から3級のすべてが対象になっています。後で触れる自動車税が1級のみであることを考えると、かなり手厚い取り扱いだといえます。
対象になるのは、ご本人が所有する車のほか、生計を同じくするご家族が所有する車です。
ただし申請期限には注意が必要で、納税通知書を受け取った日から納期限までのあいだに申請しなければなりません。納期限を過ぎてしまうと、その年は申請できなくなります。通知書が届いたら、後回しにせず手続きされることをおすすめします。
自動車税の減免は1級のみ
こちらは兵庫県の制度で、精神障害者保健福祉手帳では1級のみが対象です。減免額にも上限が設けられています。
軽自動車税と自動車税は、名前が似ているうえに対象等級も窓口も違うため、混同しやすいところです。整理しておきます。
| 軽自動車税 | 自動車税 | |
|---|---|---|
| 対象等級 | 1級〜3級 | 1級のみ |
| 窓口 | 尼崎市 | 兵庫県(県税事務所) |
相続税にも障害者控除があります
少し先の話になりますが、知っておくと安心できることなので触れておきます。障害のある方が相続人になったとき、相続税が軽くなる仕組みがあります。
一般障害者の場合は「(85歳 − 相続時の年齢)× 10万円」、特別障害者の場合は「(85歳 − 相続時の年齢)× 20万円」が控除されます。たとえば40歳の方なら、一般障害者で450万円です。決して小さな金額ではありません。
さらに、控除しきれなかった分は扶養義務者の相続税から差し引くことができます。ご本人だけでなく、きょうだいや親の負担もあわせて軽くなる設計になっているわけです。
もっとも、この控除が実際にどれだけ効くかは、相続財産の全体や相続人の構成によって変わります。そのときが来たら、相続手続きの中で確認していくことになります。
メリット⑤ NHK受信料と携帯電話代が安くなります
毎月の固定費に関わる部分です。手続きは基本的に一度きりですので、済ませてしまえば後は放っておいても効き続けます。
NHK受信料の減免
全額免除の対象になるのは、手帳をお持ちの方がいる世帯で、世帯全員が住民税非課税である場合です。半額免除は、世帯主が受信契約者で、精神障害者保健福祉手帳1級の方がいる世帯が対象になります。
申請は市の窓口で受け付けています。窓口で証明を受けたうえで、NHKに提出するという流れです。
携帯電話の割引
大手3社にそれぞれ障害者向けの割引があります。ドコモは「ハーティ割引」、auは「スマイルハート割引」、ソフトバンクは「ハートフレンド割引」という名称です。
ショップの窓口で手帳を提示して申し込むと、基本使用料などが割引されます。ただし料金プランによって割引の内容が変わりますので、今お使いのプランで適用されるかどうかを先に確認しておくと確実です。
公共施設の利用料
尼崎城をはじめ、手帳の提示で入場料が減免される施設があります。もっとも、どの手帳が対象か、介護者も無料になるかといった条件は施設ごとにばらばらです。お出かけの前に、その施設のホームページで確認しておかれると確実です。
メリット⑥ 障害者雇用枠に応募できるようになります
手帳がなければ障害者雇用枠には応募できません。ここは手帳の役割として大きい部分です。
障害者雇用枠では、通院への配慮、業務量の調整、勤務時間の相談といったことを、あらかじめ前提として話せます。一般枠では切り出しにくいことを最初から共有できる。この違いは、働き続けられるかどうかに直結します。就労移行支援や就労継続支援を利用するときにも、手帳が判断材料になります。
誤解されやすいのですが、手帳を取ったからといって一般枠を諦めることにはなりません。手帳を持っていても一般枠には応募できますし、提示するかどうかは応募のたびにご自身で選べます。手帳は選択肢を減らすものではなく、増やすものです。使わない年があってもかまいませんし、必要になったときに使えばいいだけの話です。
尼崎市では受けられないもの
メリットばかり並べても、実際に窓口へ行ってがっかりされては意味がありません。受けられないものについても書いておきます。
水道料金の割引はありません
尼崎市には、障害者向けの水道料金の減免制度がありません。隣の西宮市や芦屋市には制度があるため、「障害者手帳 水道料金 割引」といった調べ方をすると他市の情報が出てきて、尼崎市にもあるものと思ってしまいがちです。
問い合わせる手間を省いていただければと思い、あえて書いておきます。
福祉タクシーチケットも対象外です
尼崎市の福祉タクシーチケットは、身体障害者手帳(肢体1〜2級、内部障害1級ほか、視覚1〜2級)、療育手帳A、介護保険被保険者証のいずれかをお持ちの方が対象です。精神障害者保健福祉手帳は、現在のところ含まれていません。
そのかわりというわけではありませんが、バスの無料乗車証は1級から3級まで対象です。移動の支援については、そちらを活用してください。
デメリットは2つだけです
ここが一番気になっておられるところでしょう。よく聞かれる不安から順にお答えします。
周囲に知られてしまうのではないか
知られません。市から職場や学校へ通知がいくことはありませんし、持っているだけで誰かに伝わるような仕組みもありません。
手帳を使うかどうかは、そのつどご自身で決められます。バスで見せる、ショップで見せる、それ以外の場面では財布に入れたままにしておく。そういう使い方で何の問題もありません。
勤務先に報告する義務はあるのか
ありません。一般枠で働いている方が、手帳を取ったことを会社に伝える義務はありません。伝えるかどうかは、ご自身の判断です。
ただし、年末調整で障害者控除を受ける場合は、会社に申告することになります。会社に知られたくないという場合は、年末調整では申告せず、確定申告でご自身で手続きするという方法があります。控除の額は変わりませんので、こちらでも不利にはなりません。
就職や保険、住宅ローンに影響するのか
手帳の有無が理由で不利になることはありません。手帳を持っていること自体が、どこかに登録されて共有されるような仕組みはないからです。
生命保険の加入時に聞かれるのは「病気の状態」であって、手帳の有無ではありません。手帳がなくても、通院していれば告知の対象になります。つまり、手帳を取ったことで新しく不利になる要素は生じない、ということです。
いらなくなったらどうするのか
市の窓口に返還できます。更新しなければ、2年で自然に失効します。一度取ったら後戻りできない、という性質の制度ではありません。
本当のデメリットは費用と手間です
デメリットといえるのは、次の2つです。
ひとつは診断書の費用です。手帳の申請には主治医の診断書が必要で、費用は自己負担になります。金額は医療機関によって異なります。
もうひとつは、2年ごとの更新の手間です。更新のたびに、また診断書が必要になります。体調が優れない時期に手続きが重なると、それなりの負担に感じられるはずです。
裏を返せば、デメリットはこの2つに尽きます。バスの無料乗車証、電車の5割引、税金の控除を合わせて考えれば、診断書代を上回る方がほとんどでしょう。迷っている段階で失うものはありませんし、合わなければ返せばいいのですから、まずは申請してみるという判断で構わないと思います。
保険や住宅ローンへの影響、家族に知られずに申請する方法、「障害者と認められること」への抵抗感といった点は、精神障害者保健福祉手帳にデメリットはある?知られる・仕事・保険の不安に答えますで詳しくお答えしています。まだ踏み切れずにおられるなら、そちらもご覧ください。
手帳・障害年金・自立支援医療は別の制度です
「手帳」「障害年金」「自立支援医療」。名前が似ているうえに、どれも精神科の通院に関わってくるため、混同される方がとても多い制度です。まず全体像を整理しておきます。
| 精神障害者保健福祉手帳 | 障害年金 | 自立支援医療(精神通院) | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 割引・控除を受ける | 生活費の給付 | 通院医療費の軽減 |
| 申請先 | 市(県が判定) | 年金事務所など | 市 |
| もらえるもの | 手帳 | お金 | 受給者証 |
| 有効期間 | 2年 | 人により異なる | 1年 |
| 等級 | 1〜3級 | 1〜3級 | なし |
手帳の等級と障害年金の等級は連動しません
ここが最大の誤解だろうと思います。手帳が3級であっても、障害年金は2級と判断されることがあります。判定する機関も、審査の基準も、根拠となる法律も違うのですから、連動する仕組みはそもそも存在しないわけです。
「3級だから年金は無理だろう」と思い込んで、請求しないまま過ごしている方がおられます。手帳と年金は別物だと知っていれば避けられたはずのことなので、もったいない話だと思います。
また、手帳は障害年金を請求するための条件ではありません。手帳がなくても障害年金は請求できますし、逆に手帳を持っているから年金が出るというものでもありません。
なお、障害年金の請求手続きの代理は、社会保険労務士の業務です。行政書士が代理することはできませんので、年金についてお困りのときは、お近くの社会保険労務士か年金事務所にご相談ください。
自立支援医療とは同時に申請できます
自立支援医療(精神通院)は、通院にかかる医療費が原則1割負担になる制度です。等級の条件はありませんので、3級の方も、まだ手帳をお持ちでない方も利用できます。
そして尼崎市では、手帳用の診断書1通で、手帳と自立支援医療の両方を申請できます。診断書を2通書いてもらう必要がありません。費用も通院の回数もひとつで済むわけですから、これから両方を申請される方は、窓口で「手帳と自立支援医療を同時に申請したい」と伝えてください。この一言で、診断書代が1通分浮きます。
体調が悪いときに病院と役所を何往復もするのは、それだけで消耗します。減らせる手間は減らしておきたいところです。
3つの制度の要件や、どれから申請すべきかについては、手帳・障害年金・自立支援医療は何が違う?【尼崎市版】|混同しやすい3制度を整理でさらに詳しく解説しています。
尼崎市での申請の流れ
窓口へ何度も足を運ぶのは大変ですから、一度で終えられるように必要なものを整理しておきます。
手順は4つです
1.条件を確認する
初診日から6か月以上たっていること。条件はこれだけです。
2.主治医に診断書を依頼する
診察のときに「精神障害者保健福祉手帳の診断書をお願いします」と伝えてください。書式は市の窓口か、兵庫県の電子申請システムから入手できます。病院に用意があることも多いので、まず聞いてみるのが早道です。書き上がるまでに数週間かかることもありますので、早めに依頼しておかれるとよいでしょう。
3.書類をそろえる
診断書で申請する場合に必要なものは、申請書、精神障害者保健福祉手帳用の診断書(初診日から6か月以上経過したもの)、写真(縦4cm×横3cm、1年以内に撮影したもの)、マイナンバーカードなど個人番号がわかるものです。
障害年金を受けておられる方は、診断書が要りません。かわりに、障害年金証書の写し、直近の年金振込通知書、年金事務所への照会同意書、写真、マイナンバーがわかるものを提出します。診断書の費用がかからないルートですので、該当する方は必ずこちらでお手続きください。
4.窓口へ提出する
提出先は、北部保健福祉センターの北部地域保健課、南部保健福祉センターの南部地域保健課、各地区の保健・福祉申請受付窓口、または尼崎市保健所の疾病対策課です。
尼崎市保健所 疾病対策課
尼崎市七松町1丁目3番1-502号 フェスタ立花南館5階
電話:06-4869-3053
ご家族が代わりに手続きできます
申請そのものはご本人の名前で行いますが、書類の提出や手帳の受け取りは、ご家族や医療機関の職員が代行できます。ご本人が外出できない状態であっても、手続きを進めることは可能です。
「本人が動けないから、うちは無理だろう」と諦めてしまう前に、一度窓口へ電話して事情を伝えてみてください。
書類の準備そのものがしんどいときは
申請の手順を並べてみると、それぞれは大きな作業ではありません。ただ、申請書を書いて、写真を用意して、診断書を主治医に頼んで、受付時間に間に合うように窓口へ出向く。これをまとめて背負うとなると、体調が落ちている時期にはかなり重い話です。
ご家族が代わりに動ける方はいいのですが、家族に頼みたくない事情のある方もおられます。そもそも手帳のことを家族に知られたくない、という方も少なくありません。
そうした場合には、行政書士が代わりに手続きを進めることができます。障害者手帳の申請サポートとして、申請書類の作成から、窓口への提出までをお引き受けするものです。
このことは、市のホームページには書かれていません。案内に載っているのは「ご家族または医療機関の職員」までです。おそらく行政書士でも受け付けてもらえるだろう、とは思いました。ただ、確信のないまま「代行できます」と書くわけにはいきません。疾病対策課に電話をして尋ねたところ、行政書士が代行しても差し支えないという回答をいただきました。
調べているあいだ、こういうことが何度もありました。制度の案内には、書かれていないことのほうが多い。 ホームページを読んで「自分は対象外だ」と結論を出す前に、一度電話をしてみる価値はあります。窓口の方は、聞けばきちんと答えてくださいます。
つまり、ご本人もご家族も市役所へ足を運ばずに、申請を終えることができます。窓口の受付時間を気にする必要も、体調のいい日を待つ必要もありません。
念のため、できないことも書いておきます。診断書を書くのは主治医であり、等級を判定するのは兵庫県です。そこに行政書士が関われる余地はありません。書類と手続きの部分をお預かりする、というお手伝いになります。
「自分でできそうだ」と思われたなら、そのまま進めていただくのが一番です。この記事の手順どおりに動けば、迷わず終えられるように書いたつもりです。手が止まってしまったときにだけ、思い出していただければ十分です。
交付までの時間と更新の時期
申請してすぐに手帳が出るわけではありません。数週間から2か月ほどを見ておかれると安心です。
有効期間は2年で、更新は有効期限が切れる3か月前から申請できます。うっかり切らしてしまうと割引が使えない期間が生じますので、期限が近づいたら早めに動いてください。
必ず交付されるとは限りません
申請すれば全員に交付される、というものではありません。非該当となることもあります。
ただ、その場合も時期を改めて再度申請できます。体調や生活の状況は変わっていくものですから、一度だめだったからといって二度と取れないわけではありません。
診断書の様式の入手先、主治医への頼み方、写真の規格、更新のときの注意点まで、手続きの細部は精神障害者保健福祉手帳の申請方法【尼崎市版】|必要書類・窓口・代行できる人にまとめました。実際に申請へ進まれる方は、そちらを手元に置いてお読みください。
よくある質問
まとめ
- 尼崎市では市内のバスが無料になります。1級から3級まで対象です
- 2025年4月から電車の運賃が5割引になりました。手帳への記載が必要です
- 医療費の助成は1級・2級が対象で、3級の方は自立支援医療をお使いください
- 2026年7月から、自立支援医療と障害者医療費助成の併用ができるようになりました
- 税金の控除は、年末調整か確定申告で受けられます
- 軽自動車税の減免は、尼崎市では1級から3級まで対象です
- 手帳の等級と障害年金の等級は連動しません
- 自立支援医療とは、診断書1通で同時に申請できます
- デメリットは診断書の費用と2年ごとの更新の手間の2つだけです
- 周囲に知られることはなく、いらなくなれば返せます
手帳を取ったあとに、多くのご家族が向き合うこと
手帳の申請が終わって少し落ち着いたころ、ご家族がふとこう考える瞬間があります。
「私がいなくなったあと、この子の生活はどうなるのだろう」
いわゆる「親なきあと」の問題です。もっとも、これは障害のあるお子さんに限った話ではありません。40代や50代で突然亡くなり、遺されたご家族が手続きに追われる。そういう話は、身のまわりでも決してめずらしいことではないはずです。終活というと60代70代の話に聞こえますが、40代になったら考えはじめても早すぎることはないと思います。
備え方はいくつかあります。福祉サービスの利用、後見の制度など、ご家庭の事情によって適した方法は変わってきます。尼崎市の障害福祉の窓口や社会福祉協議会でも相談を受け付けていますので、まずはそちらで話を聞いてみるというのもひとつの方法です。
そのなかで、遺言は最も基本的で確実な備えのひとつだといえます。障害のあるお子さまに何をどう遺すのか。きょうだいに負担をかけない形にするにはどうすればいいのか。手続きを誰に任せるのか。文章にして残しておくだけで防げる混乱は、思いのほか多いものです。
財産が多くない場合も同じです。むしろ金額が小さいほど「話し合えばなんとかなる」と後回しにされて、いざというときに困ることがあります。
尼崎で行政書士事務所を運営しています
行政書士として、遺言書の作成と、公正証書にするまでのお手伝いを承ります。「まだ何も決まっていない」「何から考えればいいのかもわからない」という段階で構いません。お気持ちを整理するところから、ご一緒します。
手帳の申請についても、書類の作成から窓口への提出まで代わりにお引き受けします。手帳のこと、その先のこと、どちらからご相談いただいても構いません。順番はご家庭の事情によって変わります。
制度は、知っている人だけが使えるものであってはいけないと思っています。必要な方に必要な情報が届くように。この記事がその一助になれば幸いです。
まずは無料相談から
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参考にした主な情報源
- 尼崎市公式ホームページ「精神障害者保健福祉手帳」
- 尼崎市公式ホームページ「障害者医療及び高齢障害者医療の受給資格など」
- 尼崎市公式ホームページ「障害者等乗合自動車特別乗車証の交付」
- 尼崎市公式ホームページ「福祉タクシーチケット」
- 尼崎市公式ホームページ「軽自動車税の減免について」
- 尼崎市公式ホームページ「自立支援医療(精神通院)制度」
- 兵庫県「精神障害者に対する旅客鉄道株式会社等の旅客運賃割引について」
- 兵庫県「自動車税身体障害者等減免制度」
- 国税庁「障害者控除」「相続税の障害者控除」
※制度の内容は変更されることがあります。実際のお手続きの前に、各窓口で最新の情報をご確認ください。