就労継続支援B型の事業所を立ち上げたい。けれど、それが事業として続けていけるものなのか、まだ見通しが立たない。この記事は、そういうところで足を止めている方に向けて書きました。
私が障害福祉サービスに関わろうと思ったのは、障害児が大人になったあとのことを、深く考えることがあったからです。家庭のほかに居場所が少ないこと、保護者の負担が大きいこと。そうした人たちを受け入れる場所をつくるお手伝いができればと思い、いま取り組んでいます。
先に結論をお伝えします。B型の事業所の収入は、利用者の利用に応じて支払われる国の給付費です。作業で得た売上は利用者の工賃に回すお金で、事業所の取り分にはなりません。そして、その工賃の水準が、事業所に入る報酬にも関わってくる仕組みになっています。
ここでは、お金の流れから、開業前に越えなければならない条件、尼崎市で申請するときの実際までを、順に整理していきます。
就労継続支援B型の収入の仕組み|2つのお金の流れ
事業所の収入源は「訓練等給付費」
B型を利用する方は、まず市から支給決定(サービスを使ってよいという決定)を受けます。事業所はその方と契約してサービスを提供し、費用を国保連(国民健康保険団体連合会)を通じて請求します。本来は利用者に支給されるお金を、事業所が代わりに受け取る形です。
このお金を「訓練等給付費」といい、利用者がサービスを利用した実績に応じて計算されます。事業所の収入の土台は、利用者がどれだけ通ってくれるかにかかっているわけです。
生産活動の売上は工賃へ|平均工賃月額で基本報酬の区分が決まる
B型では、利用者が軽作業や製造、販売などの生産活動に取り組みます。その売上から材料費などの経費を引いた額は、工賃として利用者に支払わなければなりません。工賃の平均が月3,000円を下回ってはならないことも、国の基準で決められています。
たとえば、作業の売上が月10万円、材料費などの経費が3万円なら、残りの7万円は利用者の工賃として支払います。事業所の運営を支えるのは、作業の売上ではなく、あくまで訓練等給付費です。
そのうえで、事業所の報酬の単価は、前年度の「平均工賃月額」(利用者に支払った工賃の1か月あたりの平均)の区分で決まります。工賃の水準は、事業所の基本報酬にも関わってきます。国の基準にも、工賃の水準を高めるよう努めなければならない、とはっきり書かれています。
B型の工賃の低さには、私も引っかかるものがあります。利用者の中には、事業所での作業を「労働」として受け止めている方が少なくないからです。
B型は雇用契約を結ばないため、最低賃金は保証されません。それでも、工賃という名前でお金が支払われる以上、働いたことへの対価だと受け止めるのは自然なことです。そう考えると、利用者にとって今の工賃は、やはり安すぎると感じられるのです。
ただ、学んでみてわかったのは、この事業が細かな決まりと公費によって支えられているということでした。工賃と報酬を結びつけている仕組みも、その一つです。そうした決まりに支えられていることは、利用者にとって大事なことだと思います。
基本報酬の決まり方と入金のタイミング
基本報酬が変わる3つの要因|開所1年目・加算と減算・令和8年6月の改定
工賃で単価が決まると聞くと、開所直後から高い報酬を見込みたくなります。けれど、新しく指定を受けた事業所は、1年目は実績に関係なく「平均工賃月額1万円未満」として計算されます。年度の途中(5月〜3月)に指定を受けた場合は、2年目まで同じ扱いです。
つまり開所から1〜2年は、低い単価で職員の給与や家賃をまかなう前提で、収支を組んでおく必要があります。
単価は、職員をどれだけ手厚く配置するかや、加算(一定の体制を整えた事業所への上乗せ)を届け出るかどうかでも変わります。反対に、虐待防止や身体拘束をなくすための委員会・研修、災害などに備える業務継続計画、事業所情報の公表といった義務を果たしていなければ、基本報酬が減らされる「減算」もあります。
報酬そのものも、国が定期的に見直します。令和8年6月には、B型の平均工賃月額の区分の基準が3,000円引き上げられました。開業前に立てた収支計画が、数年後も同じように成り立つとは限りません。
改定があれば、収支の計算の前提も変わります。うっかり去年までの単価で計算してしまう、ということは避けなければなりません。こうした改定に合わせた届出の見直しは、開所後に行政書士がお手伝いできることの一つです。
給付費の入金は翌々月|開業時に運転資金が必要な理由
見落とされがちなのが、入金の時期です。サービスを提供した月の翌月1日から10日までに国保連へ請求し、審査を経て、支払いはさらにその翌月の中旬ごろになります。4月に開所したなら、最初の給付費が入るのは6月です。
その間も、職員の給与や家賃は毎月出ていきます。物件の家賃は、指定を受ける前の準備期間からかかります。開所から数か月分の運転資金は、自己資金や融資で用意しておかなければなりません。
就労継続支援B型の指定基準|開業前に満たすべき条件
法人格・定員20人・人員配置基準と管理者の要件
B型の指定を受けられるのは法人だけで、個人事業主のままでは申請できません。株式会社や一般社団法人、NPO法人などを用意し、定款の事業目的に障害福祉サービス事業を入れておく必要があります。まだ法人がない場合は、指定申請と法人設立をまとめてご依頼いただくこともできます。
尼崎市の手引きでは、B型の利用定員は20人以上です。職業指導員と生活支援員をそれぞれ1人以上置き、合わせて常勤換算(勤務時間を常勤の人数に置き換える数え方)で利用者10人に1人以上、うち1人以上は常勤とされています。
定員を20人で組むなら、それに見合う利用者が安定して通ってはじめて、計画どおりの収入になります。最初に見た「利用の実績に応じて計算される」という話が、ここで重くのしかかってきます。
管理者にも要件があります。社会福祉主事の資格要件を満たす人、社会福祉事業に2年以上従事した人、社会福祉施設長の認定講習会を修了した人、企業を経営した経験がある人のいずれかです。管理業務に支障がなければ、ほかの職務と兼ねることもできます。
サービス管理責任者の要件|開所の時点で確保が必要
B型の事業所には、利用者一人ひとりの個別支援計画をつくり、支援の中身を管理する「サービス管理責任者」を置かなければなりません。
サービス管理責任者になるには、障害のある方への相談支援や直接支援の実務経験が、内容に応じて3年から8年必要です。この年数は、1年あたり180日以上働いた期間で数えます。
そのうえで、相談支援従事者初任者研修の講義部分と基礎研修を受け、原則2年の実務を積んでから実践研修を修了する、という段階を踏みます。求人を出せばすぐに見つかる人材ではありません。
以前は、新しく開く事業所に研修の要件を猶予する経過措置もありましたが、平成31年3月末で終わっています。開所の時点で、要件を満たした人を確保していることが前提です。採用してから要件が足りないとわかれば、開業の時期そのものがずれてしまいます。
設備基準・消防・総量規制|物件を契約する前に確認すること
事業所には、訓練・作業室、個室の相談室、洗面所・便所、多目的室などが必要です。尼崎市の手引きでは、事業を始めるまでに所管の消防署へ事前相談をするよう求めていて、申請にも消防署との協議状況がわかる書類を添えます。
物件を契約してから、消防設備の工事が必要だとわかったり、基準に合わないと気づいたりするのは避けたいところです。物件の候補が決まった段階から、指定基準に照らした確認をお手伝いしています。
もう一つが総量規制です。対象になっているのは、「就労継続支援その他の主務省令で定める障害福祉サービス」です。主務省令とは、法律を受けて国が定める細かなルールのことです。
都道府県の障害福祉計画で見込んだサービス量にすでに達している場合などには、「指定をしないことができる」と法律で定められています。
条件を整えても、地域の枠が埋まっていれば開業できないことがある。尼崎市での状況は、事前相談で確かめておく必要があります。
尼崎市で指定申請をするときの流れ
事前相談から申請まで最低3か月|開業までのスケジュール例
尼崎市では、書類を出す前に事前相談を受けます。B型のような日中活動系サービス(日中に通う形のサービス)は、事業を始めたい日の3〜5か月前ごろから、電話で予約をして市役所へ出向きます。相談から申請までは、一般的に最低3か月ほどかかるとされています。
指定日は原則として毎月1日で、書類は事業を始めたい日の前々月の15日までに出す決まりです。審査には約1か月かかり、書類に不備があれば、その直しの期間も加わります。
手引きの例では、11月に事業を始める場合、7月に初期相談をして、設備基準やサービス管理責任者の要件、消防との協議の経過を確認します。書類一式は9月15日までに窓口へ持参し、10月の審査を経て11月に開始です。
書類は正副2部をつくり、窓口へ直接持っていきます。窓口では事業の内容を聞き取りながら確認が進むため、管理者になる予定の方も、相談期間中に最低1回は来るよう求められています。
必要書類は20種類以上|開所後も続く届出
尼崎市の提出書類一覧を見ると、B型の申請で必須とされる書類だけで20種類を超えます。勤務形態一覧表、職員の実務経験証明書や雇用契約書、平面図と面積の一覧、運営規程、事業計画書、収支予算書などです。
これに加えて、報酬を算定するための届出書や、B型の基本報酬に関する書類も用意します。尼崎市内だけで初めて事業を行う法人は、業務管理体制(法令を守るための社内の体制)の届出も必要です。
やっかいなのは、これらが互いにつながっていることです。採用予定の職員が1人変われば勤務表も経歴書も直すことになり、部屋の使い方を変えれば平面図も設備の一覧も変わります。物件探しや採用を進めながら、書類どうしのつじつまを合わせ続けなければなりません。
こうした書類をそろえてつじつまを合わせる作業は、指定申請の書類一式の作成としてお引き受けしています。
私も障害福祉サービスの研修を一通り受けたとき、把握すべき内容が膨大にあるとわかりました。本を横に置いて確かめながらでなければ、とても追いきれない量です。たとえば人員配置ひとつとっても、サービスごとに決まりがあり、すべてを覚えきるのは難しいと感じました。
報酬も、改定のたびに変わります。大切なのは内容を覚えることより、行政の手引きなどを確かめる手間を惜しまないことです。
開所してからも手続きは続きます。尼崎市では、就労系の事業所は毎年4月に、前年度の実績をもとに基本報酬と加算を届け出ます。区分が変わらなくても提出が必要で、この点は兵庫県とも扱いが違います。
ほかにも、年度ごとに工賃の目標を立てて利用者に知らせること、届け出た内容が変わったら10日以内に届け出ること、6年ごとの指定の更新があります。
書類は行政書士に任せ、利用者を迎える準備に時間を
ここまで読んで、思っていたより手間がかかると感じられたかもしれません。開業準備で多くの時間を取られるのは、行政とのやりとりと書類づくりです。
けれど、事業を始める方にしかできないことは、ほかにあります。どんな作業を用意するのか、どんな職員と働くのか、地域の相談支援事業所やご家族とどうつながり、どんな利用者を迎えるのか。準備の時間は、本来そちらに使っていただきたいのです。
そして、利用者のことを、福祉サービスを提供する相手としてだけでなく、一人の人間として尊重する姿勢をもって、運営を始めてほしいと思っています。
利用者は、何らかの困難を抱えているかもしれません。しかし多くの方は、社会とかかわりたいと思って事業所を利用します。事業者の方には、社会の側に立つ者として、あくまで対等な人間どうしであるという意識を持っていてほしいのです。
利用者と向き合う準備に時間を使っていただけるよう、行政書士は、事前相談に向けた準備や指定申請の書類一式の作成、定款の事業目的の確認、法人設立のサポートをお引き受けしています。
ただし、設立登記の申請は司法書士、雇用関係の助成金の申請は社会保険労務士の業務ですので、その部分はそれぞれの専門家へのご相談になります。
物件の候補が見つかった段階や、サービス管理責任者の候補者が決まった段階でご相談いただければ、基準に照らした確認を先に済ませられます。あとから計画を組み直す手間を、減らすことができます。
まとめ
- B型の事業所の収入は、利用者の利用に応じた訓練等給付費です
- 作業の売上は工賃に回すお金で、その工賃の水準が報酬にも関わります
- 開所1年目は低い区分で計算され、報酬は国の改定でも変わります
- 給付費の入金はサービス提供の翌々月なので、運転資金が必要です
- 法人格、定員20人以上、職員の配置、管理者とサービス管理責任者の要件が指定の前提です
- 物件は消防署への事前相談を。総量規制で指定されないこともあります
- 尼崎市では事前相談から申請まで最低3か月、必須書類は20種類以上です
尼崎市で就労継続支援B型の立ち上げを考えている方へ
尼崎で行政書士事務所を開いています。女性の行政書士として、事業にかける想いを丁寧にお聞きし、その想いを形にできるよう、一緒に手続きを進めてまいります。
障害福祉サービスの指定申請として、事前相談の準備から申請書類の作成までをお引き受けしています。尼崎市・西宮市を中心に、オンラインで全国からのご相談にも対応しています。指定申請と法人設立を同時にご依頼いただく場合は、割引があります。
B型は、利用者にとって日中に通える場所であり、働く機会を得られる場所です。その場所を開こうとする方が、書類の前で立ち止まってしまうのは惜しいことです。構想の段階でも、お問い合わせは無料ですので、お気軽にご相談ください。
参考にした主な情報源
- 尼崎市「指定障害福祉サービス事業者等 指定申請について(てびき)」令和4年版
- 尼崎市「指定申請に必要な提出書類一覧」
- 尼崎市「【障害福祉サービス等】指定申請手続き及び届出等について」
- 尼崎市「就労系サービスの介護給付費等算定に係る体制等に関する届出について」(令和8年3月19日)
- 兵庫県「障害福祉サービス事業 指定申請のてびき」令和8年4月
- 厚生労働省「就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて」
- 大阪府「基本報酬について」(新規指定事業所の平均工賃月額の扱い)
- 長野県国民健康保険団体連合会「障害者総合支援給付等審査支払にかかる請求支払の流れ」
- 障害者総合支援法 第36条
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第201条
※制度の内容は変更されることがあります。尼崎市の手引きは令和4年版のため、実際のお手続きの前に、事前相談で最新の基準をご確認ください。
まずは無料相談から
これであんしんチェック!内容を確認しよう!
参考にした主な情報源
- 尼崎市「指定障害福祉サービス事業者等 指定申請について(てびき)」令和4年版
- 尼崎市「指定申請に必要な提出書類一覧」
- 尼崎市「【障害福祉サービス等】指定申請手続き及び届出等について」
- 尼崎市「就労系サービスの介護給付費等算定に係る体制等に関する届出について」(令和8年3月19日)
- 兵庫県「障害福祉サービス事業 指定申請のてびき」令和8年4月
- 厚生労働省「就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて」
- 大阪府「基本報酬について」(新規指定事業所の平均工賃月額の扱い)
- 長野県国民健康保険団体連合会「障害者総合支援給付等審査支払にかかる請求支払の流れ」
- 障害者総合支援法 第36条
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第201条
※制度の内容は変更されることがあります。尼崎市の手引きは令和4年版のため、実際のお手続きの前に、事前相談で最新の基準をご確認ください。